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−第22回(平成2年度)− |
小さなブティックの 片隅に吊されていた 夜明けの空の色をしたブラウス 即座に紙幣と交換した 縫い目から希望の光がこぼれる このブラウスに触れる時 すべての意識を注ぎ込んで 他のどれよりも 丁寧に扱った だから、だろうか このブラウスとの 隔たりを感じてしまうのは あの人のこともそうだ 優しいまなざしを 独占したくて あの人の前では 心の糸を緩めることができない 自分が別の女を演じていることに ふと、気づく時 あの人との距離は もはや 測ることさえできない 想いを寄せているものに 向かう時 あふれるほどの感情を 閉じ込めておく 器はないものだろうか |
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