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−第24回(平成4年度)− |
わたしは 芯だけで 立っていた 送るということの 不思議 父は 骨壺に入った時から 饒舌になった 父の声は 絶え間なく 鳥影のような 形になり 音になり 気配になって わたしの 皮膚を 静脈を 心を 横切った 寄り添う骨の群れは 樹木の 冴えた匂いがした 送るということの 錯覚に 気づかないまま 父とわたしは 紙片の裏道に 分かれてしまった 今 無と有が 絡み合い せめぎ合い そこに 一体 どちらが存在するといえるのだろう けれど 送るということの 真実 過去が ふっと 側に来て 叫びのような悔恨の種を 植え付けていく |
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