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−第25回(平成5年度)− |
石の煙突から細い煙が流れ始めた時 私は思った 魂はどこへ行くのだろう…と 古ぼけたがれきのような祭場から 黒い蝶のように 人々が踊り出る 厳かな踊りの輪から ひとひら、ふたひらと踊り出る そうして大きく息をつき 皆軽やかにざわめき合うのだ 晩秋のぴんと張りつめた空気の中を 人々のざわめきが右往左往する そうしてその声だけが どんどん空の高みへと昇っていく 白い煙はいつしかゆるやかな波となり 来た道を戻るのか それとも地にこぼれて次に来る春を待つのか 何でもないことなのかもしれない 生命のくり返しとは 薄い三日月が空に残っている午後 |
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