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−第28回(平成8年度)− |
終日 葉という葉が落ち続けた 夕刻 わたしの心も 裸木になった 人がずっと抱き続けてきた さびしさという花芽を いくつか 残したまま こんなとき 暮れかかる「時」の息遣いに ふっと もたれてみたくなる やわらかな太陽が 無言で わたしの手の平の静脈管から 茜色を 注ぎこんでくる 全身を染め上げられたとき 無数のきのうが散蒔いた 孤独な感情が いつしか いとおしい形に変わっていた 夕陽の進んで行く音の中で 少しだけ 立ち止まろうか 微かだけれど深い音だ ひそやかに呼吸する音だ 空は 知っているに違いない わたしが 今 同じ音を発しながら 身篭っていることを― |
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