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−第30回(平成10年度)− |
森に居た 光と影は別々の思いをはらんで 葉影の間にいくつもの縞を作った
遠い森の記憶は どこか曖昧で 曲がりくねった空洞に 笑いや 哀しみや 怒や とるに足らない日常を 流し込んでは みな かろうじて幸福という樹を保っていた そうして ぽつり、ぽつりと置き去りにされた想いは 言い出せないまま 胸の奥で 時折、カタカタと音をたて 私の眠りをさえぎった
乾いてゆくことで朽ち果てる念とを 抱き合わせたままで せめぎ合う この時間の流れの中で 時計の針は 半分は過去をふりこぼし もう半分は未来を掬い上げ
轍のように残しながら… |
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