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−第35回(平成15年度)− |
私の家は 線路沿いにある 列車が通るたびに 部屋で聴いているラジオの声が かき消されてしまう 鍵のかかった窓や レースのカーテンを すりぬけて 雷を呑みこんだ 夕立のような 音の網で ラジオの声を さらってゆくのだ その聴けなかったところにこそ 最良の言葉が あったんじゃないかと 私の裡に 根拠のない くやしさが 芽生える 聴きたくない言葉だったかも知れない と なぜ思わないのだろう 届かなかった 空白の音色は 上りの列車が 街へ運んでいった 聴きそびれた 空白の音色は 下りの列車が 海辺へ運んでいった 私の空白が 静かに 満ちてくる |
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