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日応寺の森は、アカマツ林が多くを占めますが、一部はコナラやアベマキなどの落葉広葉樹林とヒノキの植林です。また、アカマツとコナラやアベマキなどは多くのところで混在しています。アカマツ林に特徴的な植物としては、コバノミツバツツジ、ヤマツツジ、モチツツジ、シロバナウンゼンツツジなどのツツジの仲間があります。特に多いのはコバノミツバツツジで、4月には山がピンク色に染まります。モチツツジはここが自生の境界地で、西の端にあたります。また、ヤマツツジとモチツツジとの雑種のミヤコツツジも見られます。
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ウリハダカエデ |
落葉樹
コナラやアベマキ以外の落葉樹では、タカノツメ、マルバアオダモ、アオハダ、リョウブなどがあります。食べられる実がなるものではクリ、カマツカ、ナツハゼ、アキグミなどがあります。カエデの仲間では、ウリカエデが多く、イロハモミジとウリハダカエデが少しあります。サクラの仲間では、ヤマザクラやカスミザクラが点在します。ヤマザクラやカスミザクラを見分けるのはむつかしいのですが、カスミザクラの方が開花時期が遅いようです。
低木では、ガマズミの仲間が目だちます。コバノガマズミ、ミヤマガマズミ、ガマズミの3種類がありますが、最も多いのはコバノガマズミです。コバノガマズミは、葉の付け根に細いヒゲがあることから区別できます。
常緑樹
常緑樹の高木ではシイやカシ、クロバイが目立ちます。カシの仲間は、アラカシ、シリブカガジ、ツクバネガシです。多いのはアラカシで、どこでも普通に見られます。また、ここのシリブカガシは比較的密生しており、かなりの数があります。かめのこう岩の辺りまで上ると、カゴノキがあり、特徴的な樹肌を見ることができます。クロバイは、少数が点在していますが、黒い幹と強い匂いのする花で気がつきます。
低木では、ヤブツバキ、ヒサカキ、サカキ、シャシャンボ、アセビなどが見られます。サカキとヒサカキとは混在しないようで、別々の所に自生しています。
珍しいものでは、県南でありながらアテツマンサクが自生することです。出会いの広場の下にあり、3月には黄色の花を咲かせます。また、ヤマボウシもあり、初夏に白い花を見ることができます。
水生植物
ここには、大きな湿原があるのに加え、谷あいに小さな湿地が点在しているので、水生植物の種類が豊富です。中には貴重な種類の植物もあります。
春先のショウジョウバカマから始まり、トキソウ、サギソウ、モウセンゴケ、サワギキョウ、アケボノソウと春から秋まで花を楽しむことができます。水に浮いているものでは、ヒツジグサやジュンサイ、フトヒルムシロなどがあります。ジュンサイは谷あいの池に何カ所かあります。モウセンゴケは湿原以外にも、山道の溝や湧き水の周辺など多くの場所で見られます。食虫植物は、モウセンゴケ以外にヒメタヌキモやイシモチソウがあります。イシモチソウは、少し乾燥した崖地で見られます。ミミカキグサの仲間は花の色が黄色のミミカキグサ、柴色のホザキノミミカキグサとムラサキミミカキグサの3種類があります。ホザキノミミカキグサは茎がやや高いことと、花が細長いことで区別できます。
希少なものでは、スイランやイシモチソウ、ホソバヤマジソなどがあります。特にホソバヤマジソの自生地は国内でも少ないのですが、日応寺はその東の端にあたります。
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ホザキノミミカキグサ |
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ホソバヤマジソ |
野草
水生植物以外の草本は、種類が多いので、ここでは、珍しいものを挙げてみます。まむしがつじの周辺に見られるツクバキンモンソウは、ニシキゴロモに似ていますが、花の色が淡いことで区別できます。県内の他の地域ではあまり見られないものです。ギンリョウソウは、山なみのたわの周辺に多く自生しています。時期によっては、山道に沿って点々と咲いているところに出会うこともあります。
雑草
人間が耕したり工事をしたりした所に生えるのが雑草ですが、ここでも、4種類のタンポポの仲間をはじめ、多くの種類の雑草が見られます。この山で雑草が多いのは道路沿いや見晴らし台、少年自然の家周辺です。
近年、この森の周辺で工事が多くなり、それに伴って外国から入ってきた帰化植物が増えてきています。よく目だつのは、タンポポに似ているブタクサや、イネ科のオニウシノケグサ、メリケンカルカヤ、ヒメコバンソウなどです。また、オオアレチノギクやセイタカアワダチソウも入ってきています。
現在、この森には数百種類もの植物が自生していますが、この森が、私たち市民の森としていっそう親しまれ、さらに豊かさを増していってほしいと願っています。
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イシモチソウ |
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ギンリョウソウ |
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