ホタルの里事業※とは、1992年(平成4年)より岡山市がホタルのすむ環境を守り、未来へつないでいくために始めた取り組みです。毎年5月下旬から6月上旬にかけて舞い上がるホタルの光。そんなホタルの光を守り未来へ伝えるために取り組まれている、足守川・日近川流域地区の活動についてご紹介します。
※ホタルの里事業は、2008年(平成20年)に「身近な生きものの里」事業に移行しました。今回ご紹介するのは、旧ホタルの里として登録された4団体です。
下高田地区で見られるホタル
「足守を守る会」は、1975年(昭和50年)より活動を開始し、約30年にわたり足守地区のホタルの保全活動に取り組んでいます。会員の中には、「足守を守る会」発足当初より継続して取り組んでいる方もいるそうです。
その足守地区は、ホタルが飛び交う足守一帯の下流にあり、多くの鑑賞客が押し寄せる上流よりも、比較的ゆったりホタルの鑑賞ができる地域です。
そのような地域で「足守を守る会」は、きれいな川の環境を保つため、普段から1.5kmにわたって土手の草刈りやゴミ拾いを行ったり、ホタルのシーズン中には手作りの看板を設置し、川沿いのパトロールも行ってきました。さらに景観美にも配慮して、桜の木の植樹や管理、地域のお祭りにテント出店するなど一年を通じ地域の活性化にも貢献しています。
これらの活動の根底には、「訪れた人に足守地区を楽しんでいただきたい」という思いがあります。「足守を守る会」の方々が、長年にわたって守り伝えてきたホタルの光。地域の宝として未来へひきつがれていきます。
「足守を守る会」の方々が設置した手作りの看板
河川の整備活動の様子
大井地区は毎年3万人が訪れる、ホタルの里随一の鑑賞スポットです。
この地区を支える「大井しいの木いきいき会」は、1992年(平成4年)から岡山市によって「ホタルの里」に認定されたことをきっかけに活動を開始しました。ホタルのすむ環境の保全活動など、ホタル鑑賞に訪れる方を陰から支える縁の下の力持ちとして大活躍されています。
ホタルが飛び交うスポットに設置される「ほたる恋来い橋
地域と一緒になって取り組む清掃活動の様子
地中で育ったホタルの幼虫が地上へ出てくる時期になると、幼虫は水辺へと移動していきます。その際「大井しいの木いきいき会」の方々は、幼虫を一匹一匹手で優しく拾いあげ、安全な場所に運んでいます。
また、シーズン中には、ホタルの光に一番包まれるスポットへ「ほたる恋来い橋」を設置。さらに行政と連携してその周辺の交通整理、ゴミ拾い、特設テントを設置し環境啓発活動も行っています。ほかにも、訪れた鑑賞客に、ホタル鑑賞の楽しみ方を伝えるガイドやホタルについての詳しい解説を行ったり、地域のイベントに出店するなど、様々な活動を行っています。
一年を通じて地域活性化に貢献し、ホタルの生息環境を守る「大井しいの木いきいき会」。その原動力は「訪れた人が喜んでくれること」彼らの地道であたたかな活動に支えられ、これからもホタルの光は大井地区を優しく彩ることでしょう。
「下高田わらべ会」が活動を開始したのは今から約30年前。初めは地域のお祭りに屋台を出店するなどの活動を行っていました。やがて周辺地域が少しずつホタル保全活動を始め、「下高田わらべ会」もホタルによる地域活性化へとその活動をシフトしていきました。それからは、毎年ホタルが美しく舞う季節に、他の地域団体と連携してホタルまつりを開催。ホタルに関するビデオの上映や、足守中学校の生徒と一緒に水辺の生きものを展示するなど、環境保全に関する啓発活動も行っています。
これからの未来を担う子どもたちに「外に出て自然の良さに触れる」体験をしてほしいと語るのは「下高田わらべ会」の神原さん。ホタルまつりにボランティアとして参加する中学生にとっても、身近にどんな生きものが生息しているか、直に理解を深める機会につながっているそうです。
さらにホタルの生息数を増やすため、多くの時間と労力をかけてビオトープによるホタルの生息環境を整備しました。ビオトープの整備・管理を通じて、地域住民の方へもホタルの里としての理解や認識を広めているのです。こうした「下高田わらべ会」の熱心な取り組みが、ホタルの光を未来へとつないでいきます。
「下高田わらべ会」が整備したビオトープ
下高田地区で見られるホタル
「リフレッシュ福谷」は1992年(平成4年)に、岡山市が「ホタルの里」に認定したことをきっかけに、ホタルの保護活動を開始しました。活動に取り組む方々が大切にされている姿勢は、ホタルを「そっと見守る」こと。川の清掃活動の他、ホタルの里のシンボルとしてモニュメントを制作するなど、ホタルがすむ環境を保全するための活動を行っています。
さらに、毎年ホタルが飛び交う季節には、子どもたちを対象にホタルの観察会を開催しています。実際にホタルに触れることで、「人間とホタルは共存していることを子どもたちに伝えていきたい」と、「リフレッシュ福谷」の田口さんは語ります。ホタルの生息には、山の源流など水がきれいすぎるところより、人間が住む地域の水環境の方が適しているのだそうです。そのため私たちの身近な自然環境を守ることが、ホタルの光を守ることにつながっていくのです。
福谷地区では、「リフレッシュ福谷」の活動だけでなく、子どもたちへの食農体験活動など様々な学びの場が広がっています。「ホタルの光をあたたかく見守り、子どもたちに伝えていこう」という「リフレッシュ福谷」の思い。そんな思いに寄り添うように、ホタルの優しい光が福谷地区の夜空を舞うことでしょう。
「リフレッシュ福谷」が制作したホタルのモニュメント
観察会でホタルの生態についての授業を開講
色々な団体が地域に合ったホタルの保全活動に取り組んでいるんだね!