令和5年度ユース活動支援助成金に採択され、2023年10月8日、9日に兵庫県尼崎市のあまがさき・ひと咲きプラザ内のユース交流センター「アマブラリ」と「あまぽーと」、京都市の「中央青少年活動センター」、「北青少年活動センター」、「伏見青少年活動センター」での視察を行いました。
SGSGは、2017年よりユース世代(中学生・高校生)を対象とした、学校でも家でもない第三の居場所作りを行っています。代表の野村泰介は、今の仕事に就くまでは高校教師として働いていました。高校教師時代は、枠に合わない生徒たちの息苦しさを目の当たりにしながら、教師として自分にできることは無いのか?と自問自答の日々。その中で、理想を学校の外で実現させることを決意し、学校を退職し、奉還町商店街にSGSGを1人で構えました。また、SGSGが運営する奉還町ユースセンターは、2022年12月、ユース世代(中高生世代)が自らの意志で居場所を選び、自発的に活動できる場として、完全に民間運営のユースセンターを開設しました。
私は2023年の4月からSGSGスタッフと合わせて、ユースワーカーとして働いてきました。ユースセンターと出会ったのは、SGSGが運営する奉還町ユースセンターが初めてだったので、ユースセンターの知識は全くありませんでした。そのため、ユースセンターを知ることから始めました。SGSGは、2022年にユース活動支援助成金に採択されており、東京都文京区にある「b-lab」ユースセンターの話を聞いたり、取組について調べたりしました。今回、再びユース支援助成金を活用して、ユースセンターの実態やユースワーカーの心構え、施設のコンテンツなどを学ぶため、助成金に申請しました。
今回視察した施設は兵庫県尼崎市のあまがさき・ひと咲きプラザ内にあるユース交流センター「アマブラリ」と「あまぽーと」、京都市の「中央青少年活動センター」、「北青少年活動センター」、「伏見青少年活動センター」です。施設の見学にあわせて施設の概要、コンテンツ・イベントの内容、ユースワーカーが果たす役割についてお話を伺いました。ユースセンターは中高生が利用するイメージがありましたが、実際は年齢関係なく幅広い年齢層が利用できる居場所でした。尼崎市や京都府から予算が充てられている分、道具や設備、コンテンツが充実していました。
尼崎市のユース交流センター「アマブラリ」と「あまぽーと」は、ユースの学びや活動を支える施設であり、自習室や活動支援室、音楽室、ライブやダンスの練習ができるホールなどがあります。また、様々なクラブ活動があり、高校生カフェやユースフェスティバル、ゲーム大会が開催されています。
ユース交流センター
京都市の中央青少年活動センターでは、居場所づくり支援が印象的でした。ロビーと自習スペースを利用する人同士や運営者との交流が増えるように考えられた、交流プログラム「CONTACT」がありました。また、ユースシンポジウム(若者の社会参加の促進)として、アウトリーチ事業でキッチンカーを利用した活動をされています。
中央青少年活動センター
北青少年活動センターでは、地域で活動するイベントが多くありました。休日ボランティアや地域体験プロジェクトとして、若者農業体験隊「米 come CLUB」などが行われています。また、コミュニケーションが苦手な20代が集まる居場所プログラム「ごぶさた」など、大学生年代の居場所プログラム「ご飯のお友」など、地域交流を意識したプログラムが行われています。
伏見青少年活動センターでは、様々な国からの利用者がいました。海外にいるスタッフから手紙が届いたり、留学生が「にほんご教室」を利用していたり、多文化共生へのアプローチが大きかったです。また、調理器具や食器が揃った料理室があり、カフェのイベントを開催していることがあります。
北青少年活動センター
伏見青少年活動センター
なぜユースセンターが必要なのでしょうか。今回の視察で改めて思い返しました。
こども家庭庁では「全てのこどもが、安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら、様々な学びや、社会で生き抜く力を得るための糧となる多様な体験活動や外遊びの機会に接することができ、自己肯定感や自己有用感を高め、幸せな状態(Well-being)で成長」できるようにすることの重要性を掲げ、居場所作りを推進しています。
この定義を提示した上で、学校・仕事と家庭は誰もが必ず所属する居場所です。その居場所が、心地の良いものなのか・そうではないのかは、人によって様々であると思います。すでに安心できる居場所がある人は、より多くの人と関われる場所に繋がることで、ステップアップすることができます。そうでない人は、その場にとどまっていると人間としても活力がなくなってしまう可能性があります。その前に、新しい居場所と繋がることが必要です。
ユースセンターは、特定の人を対象にしたものではなく、不特定多数の人が関わり、その窓口と繋がる過程を支える役割があると考察しました。また、ユースセンターは居場所となる1つの選択肢であり、選んで利用する人たちにとって、意味のある他人になれる人が必要ではないかいうのが私の意見です。
その上で、SGSGが考えるユースセンターの理想像は、ユース世代が、ユース同士またユースワーカーなどの大人に気兼ねなく相談することが出来る「場」、社会と繋がりを持ち成長できる「場」、困る前になんとかするための「場」をつくるため、支援の核となることです。
今回の視察を通して、「悩みに寄り添い、成長に携わる」という共通点があると感じました。ユース世代は、特に様々な悩みや問題を抱えて過ごしています。虐待、ヤングケアラー、いじめ、性被害、不登校、障害など、見た目では分からない問題にどこまで踏み込むかが難しいという部分は共通認識でした。ユースワーカーはなんでも屋さんであると同時に青少年の専門家であると捉え、社会と若者をつなぐ重要な役割を担っていることを認識しました。
視察先の皆さんと
今回視察したユースセンターは、どれも公設民営であり大規模に対象者へ広くアプローチすることに長けています。奉還町ユースセンターは民設民営のユースセンターであり、小規模に対象者へ深くアプローチすることに長けています。得意とする範囲に違いはありますが、公設民営も民設民営も役割や目的は近い部分があります。SGSGが考える理想は、様々なユース世代の居場所になるために、地域にタイプの違う複数のユースセンターがあること。今後、民設民営の奉還町ユースセンターを運営し続けながら、岡山市での公設民営のセンターができるように働きかけをしていく所存です。
奉還町ユースセンターは2023年12月17日に1周年を迎えました。奉還町商店街近隣の中高生に広まりつつあり、開設以来、毎月のべ100名以上のユースが利用する場として少しずつ認知されてきています。今後も岡山県のユースセンターとして、多くの人の第3の居場所として利用していただけるように邁進いたします。ご興味持っていただけましたら、いつでも遊びにきてください。お待ちしております。