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-第42回(平成22年度)- |
今から六十年程前、テレビもゲーム機もなく、外で遊ぶ事が多く、仲良し三人組でメンコをしたり、ビー玉遊びが主だったが、カスミ網で雀を捕るコトコトという遊びもあった。メンコ、ビー玉遊びにあきると三人組の一人から「陸ちゃん、心ちゃん今夜コトコトに行かないか」と、誘いがかかる。 「おう、いこう、いこう」となると藪へ行って軒まで届く竹を三本切ってくる、一人に一本ずつ竹が要るのだ。 当時子供は、カスミ網は誰でも持っていて、網の両端をそれぞれの竹に結びつける。夕方になると、雀が軒のどこへ寝に入ったかを見届けて、夜になるのを待って出かける。二人が網の両端の竹を持って目的の軒下へこっそりと行く、軒下にくると声をひそめて 「もっと引っ張れ、網がたるんどるぞ」 「よっしゃ」と両方の竹を引っ張って網をピンと張る。 「張ったぞ、ヤレッ」と声がかかる。三人目が軒下を竹でコトコトと、下から突き上げると雀が驚いてパッと外へ飛び出す、そこへ網が張ってあるから、ポロリと網にかかるが、「捕れた!」と、両端の竹を持ってる人が、網を緩めると「ありがとう」と、いわんばかりにパアーと飛んでいってしまう。 「陸ちゃん、かかっても網を緩めるな!逃げてしまったじゃないか」 「ごめん、こんどは大丈夫だ」 「じゃあ次だ、Aおじさんの家に行くぞ」 「あすこはいやじゃ、この間も瓦がずれる言って怒られたがな」と心ちゃんは不安顔だ。 「大丈夫、だいじょうぶだよ、こっそりやればいいがな」とAさんの家に向かう 「大きな声を出すな、家の人に気づかれないようにやれよ」 「OK」網を引っ張りコトッと一回叩くと中から「コラッ!」ともう声がかかる、これはやばいぞと思ったが後の祭り、おじさんが出て待ち構えている。 「逃げろ!」おじさんも三人は捕まえられないので、残りの二人は一目散に竹をひきずって逃げる。網はやぶれて穴だらけだ。 「陸ちゃん網が穴だらけで、もう使えないぞ」 「うん、今度は心ちゃんの使わんか」と懲りない連中だった。 翌日、登校の時、昨夜の話が出て捕まった旺ちゃんに 「旺ちゃんゲンコツ喰らったか」 「いいや、ゲンコツはなかったが今度やったらただではおかんぞと、ひどく怒られたよ」 「そうか今度からは、あのおじさんの家は外さんといけんなァ」 「おう、そうせんといけんなァ」と、みんな反省もせず次に捕りに行く話になる。 捕まえた雀は小さな木箱に金網を張って、米と水をやって飼っていた。 朝早くからチュンチュンと鳴いて起こしてくれていたが、あれは雀が逃がしてくれと懇願していたのかもしれない?‥‥。 |
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