今回は、発達障害の早期発見・早期支援の大切さと、発達障害のあるお子さんと接する時に知っておいて欲しい関わり方の工夫について、岡山市こども総合相談所の壺内昌子先生にお話をお伺いしました。
大切なのは、一人ひとりの子どもが、自分らしく成長できること
発達障害は生まれながらの脳の発達の偏りです。
発達障害には、広汎性発達障害、学習障害、ADHD(注意欠陥多動性障害)があります。広汎性発達障害の中に、自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害が含まれます。(発達障害の特性についてはこちら別ウィンドウで開くをご覧ください)
広汎性発達障害は、1歳6か月健診で気付かれることもあります。この頃の育児の心配事で、「かんしゃくが強い」「大人の言うことをきいてくれない」「よく動く」「とても敏感」といったことが発達障害のためにおこっていることがあるからです。
発達障害は、早期発見が大切とよく言われますが、それは早期療育がとても大切だからです。
療育とは、障害に対する治療教育のことです。言葉や人とのやりとりなど各お子さんが、のびにくいところをのばす働きかけです。
お父さん、お母さんがお子さんに、一生懸命関わろうとしても、なかなか上手く関わることができずに疲れてしまうことがあります。そんな時には、まずは身近にいる子どもの発達についての専門家に相談してみましょう。専門家とはその年代の子どもをたくさん見ている人で、保健師さんや保育士さんなどです。
岡山市の保健センターでは、1歳6か月児健康診査・三歳児健康診査や「乳幼児こころの相談」という発達に関する相談窓口別ウィンドウで開くがあります。気になることがあれば相談してみてください。
お子さんができないことを専門機関の療育だけでできるようにするのではなく、お父さん、お母さんが療育の場で学んだ工夫を生活の中で応用して、お子さんができたらほめるといったことの積み重ねが本当の療育です。専門家の人とともに家庭で取り組むものであることを知っていただきたいです。
お子さんに丁寧に関わって、できなかったことができるようになることは、お父さんやお母さんにとって喜びです。たくさんほめてもらうことは、お子さんにとってもうれしいことです。そのような親子の関係が、その後のお子さんの人との関係の基礎になります。
最近は発達障害や療育について、たくさんの方が知っておられるようになったと感じていています。
療育が必要なお子さんが、専門機関につながりやすくなったことは良いことだと思います。しかし、親の期待通りにできないことがあるとすぐに発達障害の心配を始められる方もおられます。
まずはお父さん、お母さんが、「こちらに注意を向ける工夫をしながら、しっかり話しかける」とか「わかりやすい方法で伝える工夫をする」など意識して、家庭でしっかりと関わってみてください。
発達障害は、障害の種類や程度によって、一人ひとり現れ方は違います。
家庭の生活の中で難しいことや、苦手なことも違います。まずは、出来ることから試してみましょう。
眠ることが苦手でなかなか寝ようとしてくれない時は、眠るまでの流れを作って毎日繰り返しましょう。
お風呂の後は、牛乳を飲んで、歯みがきをして、絵本を2冊読んでもらったら、電気を消す。 繰り返ししていると、次は眠るんだなと気持ちが変わって眠りやすくなります。
お出かけは大好きなんだけれど、言葉で伝えても分かってもらえない時などは、例えば、おばあちゃんの家に行く時は、「このかばん」。 外遊びの時は、「帽子」。お買い物は、「この上着」というように物を見せて、次にする行動を伝えてみましょう。
ボール遊びをしなさいとボールだけを渡すと嫌がる子どもには、2つのものを差し出してみましょう。
ボールとおもちゃの2つを見せると、自分でボールを選んで上手く遊べる場合があります。
次の行動に移りにくいお子さんには、この曲がかかったら「片付け」。この曲だったら「お風呂」など決めて習慣づけましょう。
携帯電話に音楽を取り込んでアラームにして成功したお母さんもいます。
ごはんの途中に遊ぼうとしたけど、我慢ができた時。手で食べようとしたけど最後までスプーンを使えた時。やりたくないことや苦手なことをちょっと我慢してがんばれた時にきちんとほめましょう。
お母さんがちょうだいの手振りをして、お子さんがボールをくれたらほめてあげる。今度は、お子さんがちょうだいの手振りをしたら、お母さんはほめてボールをあげる。
ひとり遊びが多い子どもとも楽しんでみましょう。
靴の絵や写真を玄関に貼っておいて靴を脱ぐ場所を示しましょう。 おもちゃの箱には、車の絵、積み木の絵というように貼っておくと、おもちゃを片付ける場所も分かります。
アゲハチョウは、さなぎの時には、緑色と茶色のさなぎの絵
周りの環境によって緑色だったり、茶色だったりします。
このように環境が違っていても、
成長するための環境が整っていれば、
どちらのさなぎもいずれは、アゲハチョウになってはばたくことができます。
発達障害の子どもの育て方についても同じことが言えます。
子どもは一人ひとり、育つ環境や成長に違いがありますが、
二度とない子どもの時期を周りの人が、
その子にとって、よい環境を整えてあげることで、
それぞれの子どもの成長を最大限に「のばす」ことができます。
みなさんの理解と接し方ひとつで、
子どもは社会に適応する力を身につけながら、
自分らしく成長できるようにすることができるのです。